人の生涯と事業の一生
2023年08月30日
株式会社ハッピーコンビの荒井幸之助です。
「おくりびと」という映画があります。
印象に残っているのは、吉行和子さんが演じた銭湯の場面です。
彼女が一人で切り盛りする銭湯。
それはその人がいるから続いている事業。
言い方を変えると、1人の人と事業が完全に結びついています。
その人が仕事を辞めたり、いなくなれば事業は終わります。
個人が行う事業は私たちの暮らしの至る所にあります。
小規模事業者を含めると、事業の相当数がこうした人に結びついている事業ではないでしょうか。
事業を引き継ぐ人が現れないと、その商品やサービスはこの世から消えていきます。
そんな光景が近年特に増えているように思います。
例えば飲食店。
お店の味が経営者個人に依存している場合がよくあります。
なので、その人が仕事を辞めると、お店の味も消えていきます。
この味を保存することはできないのだろうかと何度も考えます。
でも、後継者がいる場合でも、同じメニューを同じレシピで作っても味が異なります。
味を引き継ぐには、店主の人となりなどを知る事が必要があるのではないか。
お店の活気や雰囲気など、食を構成するのは目の前の食べ物だけではありません。
そうした環境や食べる人の思いなども味に影響を与えるように思うからです。
結局、どうやっても先代とは同じ味にはならないかもしれません。
でも、それが時代と共に独自性を含んだ新たな味として、続いていけばもっと良いのではないか。
これは、古き良き時代の曲を、現代の奏者が新たに演奏することに似ているのかもしれません。
つまり、次世代経営者の事業は独自に進化して続いていくのです。
人の数でいえば、圧倒的に引き継ぐ人が減っていく未来。
こうした商品やサービスを全て残していくことは、これまでのやり方や技術では困難でしょう。
でも、事業と人のつながりが切れて、いずれその事業がなくなっていくのは当たり前のこと。
それは悲しいことだけれど、人の一生と同じように、事業の一生にも感謝を込めて見送ることも必要なのだろう。
「おくりびと」を見たときにそう思いました。